このどうしようもなく醜く愛しい世界で その3
どうも、ケーンです。
このコーナー、その3を書くことになってしまいました。
それでも、どうしても言いたいことがあります。楽しい記事ではありませんが、お付き合いいただければ幸いです。
上は10年近く前に放送された「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の第1話の台詞です。
もうね、岸田首相にこの台詞を叩きつけてやりたい。
先日、岸田内閣は自衛隊の敵基地攻撃能力(反撃能力)の保持を閣議決定し、そのために増税することを表明しました。
首相の会見を私もテレビで見ましたが、まあ官僚の原稿の棒読みでしたね。同じ公務員が言うんだから間違いないです。岸田さん本人の言葉は入ってないです。
いや、もしあれがぜんぶ岸田さんの言葉だとしたら、そっちのほうが問題です。だって考え方も説明の仕方も、ぜんぶ官僚と同じってことですから。
つまり、「結論ありき」ってこと。
あの会見の中で、個別具体的な話がありましたか?
例えば具体的な脅威としてウクライナに侵攻したロシアを挙げてましたけど、ウクライナと日本はぜんぜん別の国です。外交関係も違う。ロシアがどんな理由で、いつ、どうやって、日本のどこを攻撃しようとしているのか、そういう話は一切なかったですよね?
北朝鮮がミサイルを連発していることにも触れましたが、北朝鮮の狙いはアメリカです。日本にある米軍基地を邪魔だと考えているかも知れませんが、日本という国など、アメリカのおまけ程度にしか見ていません。そんな北朝鮮が、どんな理由で日本を攻撃するのでしょう?
そんなこと説明できないから、しなかったんです。中国についても同じ。危機意識を煽る事実だけをいくつか挙げて、ほら世界はこんなに危険な状態なんだよ、日本ものんびりしていられない、防衛力強化しよう、というわけです。
先に「防衛力強化」っていう結論があって、後から根拠を色々つけていっただけ。官僚のお馴染みのやり方です。
「決断しました」なんて偉そうに言うけど、岸田さんは別に何も決断していない。お得意の「聞く力」で、防衛族の官僚や議員の言う事を聞いて、それをそのまましゃべっただけです。
その「聞く力」も、どうやら国民の、正確に言えば自分の支持者を除くその他大勢の国民の声には発揮されないようですね。
まあ、岸田さんの首相としての、もっと言えば国会議員としての資質はともかくして。
敵基地攻撃能力の保持、そしてそのための増税、これはいただけません。
だって違憲だから。
9条の問題だけじゃありません。今回の決定は戦争の放棄という大原則はおろか、公共の福祉も、国民の健康で文化的な最低限の生活も破壊するものだからです。
まず一つ目。
仮に日本に侵攻した国があったとして、それに反撃したら「戦争」になります。国語辞典を引いてみて下さい。主権国家同士が軍事力を行使して争う状態を「戦争」というんです。これは「戦争の放棄」を謳った憲法第9条に明らかに違反します。
攻撃に対して反撃するなら、まず憲法改正が必要です。それをせず、議論もせずに決定を強行したのは暴挙と言わざるを得ません。
憲法解釈として認められているのは、「専守防衛」です。
攻撃に対してはひたすら「守る」。敵国がミサイルを撃ってきたら、それを撃ち落とすまでが「防衛」で、敵国のミサイル基地にミサイルを撃ち込んで破壊する、などということを憲法は認めていません。
基地にミサイルを撃ち込めば、被害が出ます。基地に人がいれば、人が死にます。
そして、ミサイル基地を破壊された敵国はどうするか? 黙って引き下がるとは思えない。別の基地から再びミサイルを撃つか、戦艦や戦闘機で直接攻撃に出るでしょう。
そうなったらもう、本格的な戦争のはじまりです。
戦後50年間、日本は懸命に自国産の戦闘機やミサイルの開発に力を注いでいました。でも、ほんとうにやるべきはそれではなかった、と私は思います。
本当にやるべきだったのは、「バリヤー」の開発です。
SFによく出てくる、アレですね。
荒唐無稽でしょうか? でも、日本人は優秀です。50年もあれば開発できたのではないでしょうか?
二つ目。
「敵国に攻撃を思い留まらせるための抑止力」として防衛力強化が必要、と岸田さんは言っていましたね。
仮に日本を狙う敵国があったとして、攻撃を思い留まるには、それを上回る軍事力を日本は持たなければならない、ということになります。
だって、
「ちょっと反撃されても、最終的には勝てるから問題ナシ!!」
なんて考えて攻めてくるかも知れないでしょう?
そうすると、当然、敵国は日本を上回る軍事力を持とうとする。すると日本はそれをさらに上回ろうと…って、あれ? この展開、聞き覚えがありませんか?
そう、冷戦時代のアメリカとソ連の軍拡競争です。
仮に脅威がロシアや中国だったとしましょう。この2国を上回ろうとするなら…とんでもない軍事超大国が誕生するとは思いませんか?
さらに言えば、そうなった日本を、今は同盟国のアメリカはどう思うでしょうか?
今度は日本が脅威だと、アメリカの大統領が言わない日が来ないと、どうして言えるでしょう?
忘れてはいけません。アメリカは今は同盟国ですが、第二次大戦では敵同士だったのですよ? 過ぎた力を持って思い上がった日本が先の大戦で何をしたか、アメリカは身に染みて知っています。日本を心の底から友好国だなんて思ってはいませんよ。
そして、あのトランプのような予測不能な大統領を誕生させてしまう国でもある。
アメリカが矛をさかしまにして日本に侵攻しない日が、永遠に来ないといいのですけどね。
三つ目。
防衛力強化のために増税する、と岸田さんは言いました。具体的には法人税、所得税、たばこ税を引き上げる、と。
たばこ税はまあ喫煙者だけの問題なのでいいとして(いやよくないか)、所得税は直接家計に打撃を与えます。賃上げをするから大丈夫、などど釈明していますが、この円安・物価高の中、企業が賃上げできる率はわずかです。5%や6%の賃上げなんて無理。2022年の平均賃上げ率は2%です。2023年もせいぜいその程度でしょう。そんなわずかな上昇の中から所得税が引かれるんですから、ぜんぜん大丈夫じゃない。
そして法人税の増税は企業の利益を減らし、賃上げをするだけの体力を奪います。どんなに労働組合ががんばっても、会社の存続がかかっている、などど経営側に言われたら妥協せざるを得ないでしょう。解雇されるよりはマシですからね。
そうして賃上げも実施されず、家計負担が上がるとどうなるか。
国民は節約します。買い控えします。するとモノを売る企業は儲からないから、ずっと賃上げができない。一方で円安は進み、物価は上がり続ける。家計はどんどん冷え込んで、貯蓄を取り崩すしかなくなる。
「貯蓄から投資へ」なんて岸田さんは意気込んでましたけど、そんな余裕なんかありません。いつか上がるわずかな利益より、今を生きるためのお金が必要なのですから。
かくして岸田さんの「所得倍増計画」は破綻する。経済は回らず、生活に困窮する人が巷に溢れかえる…。
それでも政府は軍備増強をする。国民が飢えていても構わずにどんどんミサイルを配備する…って、あれ? こんな国、今もどこかにありましたよね?
そう、北朝鮮です。
これから日本がやろうとしていること。それはあの国とどこが違うのでしょうか。
四つ目。
これはたぶん予想というより妄想の範疇であってほしいのですが、日本が軍備増強すると、アメリカはどう動くでしょうか?
かつてトランプは大統領時代にこう言いました。
「在日米軍に金がかかりすぎる」
日本の軍備が十分になれば、また専守防衛でなく反撃能力を持つようになれば、在日米軍の縮小という方向に動く可能性もあるのではないでしょうか。
そのこと自体は問題ではありません。主権国家に他国の軍隊が配備されていることのほうがおかしいですから、撤退してくれればそれに越したことはありません。
ただ、米軍が減れば、当然、その穴埋めを自衛隊がしなければならなくなり、今の規模では足りなくなる。そして「戦争したい!!」なんて変態がそうそういるとも思えませんから、日本の若者が自衛隊の募集にこぞって応募する、なんてことはないでしょう。
ならば政府はどうするか。
「募集しても来ないのなら、強制してしまえ」
徴兵制の復活です。何の訓練もしていない素人を配置するわけにはいきませんから、一定年齢に達した国民には兵役が課されることになる。
こんな将来も、決してないとは言い切れないのです。
長々と書きましたが、私は政治の専門家でもないし、軍事評論家でもありません。大学で経済学をちょっとかじっただけの、ただの平凡な一般人です。
そんな私でさえ、ここまでの想像ができる。
ということは、頭の良い霞が関の官僚たちも、議員先生たちも、想像しているということです。
みんな、わかってやってるんですよ。
国民ひとりひとりの生命より国益を優先する、戦前の日本に戻そうとしているんです。
だからみなさん、もっと声を上げましょう。
難しことはわからなくてもいい。直感的に、
増税されたら困ると思いませんか?
戦争で人を殺すのも殺されるのも嫌だと思いませんか?
どうぞ、その直感に従って声を上げて下さい。
お国のためじゃない、あなたと、あなたたちの大切な人たちのために。
最後に、こんな言葉があります。
「戦争は外交における最後の、そして最悪の手段である」
誰の言葉かは記憶していませんが、真理だと私は思います。
「戦争ができる国」へと突き進むことを「決断」した岸田内閣は、「話し合いによる外交交渉は俺たちには無理」と自分で言っているようなものです。
武力を背景にした交渉を「話し合い」とは言いません。それは「恫喝」と言うんです。
そんな国になって満足ですか、あなたたちは?
「俺は…、嫌だね」
それではまた。
ケーンでした。