ポキッとね❤
それは、去年の冬のこと。
僕が住んでる北海道は、一面の銀世界であった。
日曜日。
いい加減髪が鬱陶しくなっていた僕は、床屋に行こうと家を出た。料金きっかりの金額が入った財布と、読みかけの文庫本をポケットに入れて。
幸い待つこともなく髪を切ってもらい、すっきりした気持ちで家路についた。
ふと、思いつく。
そういえばそろそろTUTAYAが空いてる時間じゃなかろうか(注:僕が住んでる場所は都会ではないが、TUTAYAくらいあるのだ!!)。空いてたら立ち読みでもしにいくか。
時刻は9時半。TUTAYAの開店が9時だったか10時だったか覚えていなかった。
とにかく店の前まで行ってみよう、と雪をざくざく踏み鳴らしながら歩いてゆく。その日は快晴だったが、昨晩雪が降ったので道は悪かった。足首まで雪に埋まる。
残念ながら、TUTATAは10時開店だった。
なーんだ。じゃあ帰ろ。
振り向きかけた、その時だった。
つるっ。ぐきっ。
「あうっΣ(゚д゚;)」
滑った。新雪の下はつるつるの氷だったのだ。ぐきっ、というのは、思いっきり足首が曲がってしまった音だった。
こけた。痛い。やば…コレ骨いったかも。何となくそんなことを思ったが、本気ではなく、捻挫くらいに思っていた。
とにかく家に帰って、痛みが引かないようなら病院に行かねば。
そう思って立ち上がろうとしたのだが。
ぐらり。どてっ。
「あ、あれ?」
立てない。何回やっても、足首が安定せず立てない。すぐ転んでしまう。
何度も何度も、それを繰り返した。しまいには疲れて、雪の上に倒れ込んでしまった。
やばい。開店前だから人通りはない。こんなところに倒れていたら晴れてるといえど凍死してしまう。
スマホがあれば助けを呼ぶこともできただろうが、近所のこと、家に置いてきてしまっていた。
やばい。ほんとにやばい。てか寒い。そして足首痛い。
その時。
「どうしました?」
僕が何度も立とうとして転んでいたのを見ていたらしく、ある一家が車を止めて声をかけてくれた。助かったぁ(;д;)。親切な人が見ててくれてよかった。
「きゅ、救急車を…(。>0<。)」
絞り出すような声で、僕は言った。旦那さんが頷いて救急車を呼んでくれる。
程なく、僕は救急車に乗せられて近くの市立病院に運び込まれた。
後で看護師さんに聞いたところでは、僕の左足首は二段階にありえない方向に折れ曲がっていて、「うわ、これ触りたくない」と思ったそうだ。
診断は、左足首脱臼骨折。
つまり左足首は関節が外れていたわけで、どうりで立てなかったわけである。
自慢じゃないが太めの僕は転んだ時、体重のすべてが左足首にかかったらしく。中の骨は粉々に砕けていたそうである。脱臼骨折であると同時に、粉砕骨折だったわけだ。
それが、僕の2ヶ月にわたる入院生活の始まりだった。
ところで、僕のお尻のポケットに入っていた文庫本は、タイトルが「残穢(ざんえ)」という。
ホラー小説である。
普段ホラーなんて読まないのだが、好きな作者の作品だったので読んでいたのだ。誇張なく、めっちゃ怖かった。
キャッチコピーは、「怨みを伴う死は『穢れ』となり、感染は拡大する──」
まさか…ね。
その文庫本は今も、ひっそりと本棚にある。
以来、その本に触れたことは、一度もない。
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ヒィー!痛そうですねぇぇ><
でも寒い中、助けが来ないなんて状況にならなくて本当良かったです。。
私はまだ人生で一度も骨折を経験したことがないのですが、捻挫でも悲鳴をあげるほど痛いのに、想像しただけで。。。。汗
残穢は映画化もされましたよね。私も本読みましたよ~^^
投稿: ちぃ | 2017年3月20日 (月) 19時52分
コメありがとうございます☆
いえ、痛みは捻挫と大して変わらなかったですよ~。雪で冷えたのがかえって良かったのかも知れないですねw どうやっても立てないのにはさすがに焦りましたが(^-^;
残穢は何と言うか、直接的ではないんだけど、じわじわくる怖さがありますよね。一時は本当に本の呪いかと思ってましたよw
投稿: ケーン | 2017年3月20日 (月) 20時22分