冒険の記録~シーズン2.2②~
【心の闇】
事の顛末を聞いたジョゼフは憂慮する。
「ガラダから原始の雫を奪った者──その者の闇の深さが悪しき者たちに利用されなければよいが──」
モルフォールに戻ると、ガラダが意識を取り戻していた。
ガラダから原始の雫を奪った者──それはロイグであるという。彼には魔物を使役する力があった。ロイグはおそらくフィンダムの滅び──芯なる樹が朽ち果てるのを望んでいるのだろう、とガラダ。
セシリーが口を開く。
「次にロイグが目指す先は──精霊の地、ですね」
ガラダが言う。
「君たちもロイグを知っているのだろう? もし友情を結んだのなら──申し訳ないが、諦め、捨ててくれ」
精霊の地の入口に着くと、そこにロイグが現れた。
「ようこそ。目的はこれかな?」
その手には、原始の雫があった。
「冗談じゃない! 復讐の邪魔をされてたまるか!」
ロイグは言う。両親が病に冒された時、理だ、運命だと言って人々は何もしなかった。竜でさえ救ってはくれなかった。ついには父は気が触れて、この世を呪う言葉を残して死んでいった。その言葉に、僕はとらわれているのさ!
「ロイグ、あなたが、やったの?」
「そうさ。芯なる樹に毒素を植え付けてやった。そうしたらどうだ、お前たちは右往左往。わかっているぞ。みんな自分の命だけは惜しいんだろう!」
「ロイグ、レスタニアを思い出して! フィンダムも、あんなふうになれるかも知れない!」
「無理だね」
そう言って、ロイグは魔物を呼び出した。それは狂侵魔と化したベヘモットであった。
「話し合おう? ロイグ、話し合おうよ!」
「ふふ…僕の後ろ盾に誰がいるかわかるかい? 君たちも薄々感づいているんだろう?」
だが、ロイグの余裕もそこまでだった。ケーンたちが狂侵ベヘモットを倒したのだ。
「なぜだ…なぜこうなる! 黒騎士! どこにいる! 今更見捨てるのか!?」
そして黒い霧がロイグを包む。断末魔の悲鳴を上げて、ロイグは消えた。
霧が晴れると、そこに原始の雫が落ちていた。
「まだ…希望はある」
駆け寄り、原始の雫を取り上げるセシリー。
「これで、フィンダムは救われます!」
だが、これは悲しい勝利だった。その心を映したように、大粒の雨が皆を濡らした…。
モルフォールへ戻ると、すでに事の次第は知れ渡っており、ガラダは族長会議を開いているという。一行もその場へと向かうように言われた。
会談の場で、ガラダは言った。
「時は来た。精霊の地──芯なる樹の樹内へと通ずる扉を、その資格を持つものが解き開く時が来たのだ」
そして、セシリーを見遣る。
「資格を持つ者──、すなわちそれは覚者。覚者、すなわちセシリー。このフィンダムの未来は、お前に託された」
「私に…できるでしょうか?」
「できるとも。お前には、心強い友がいるではないか」
ガラダの視線が、ケーンたちに向けられる。
「精霊竜も、私にもなかったものをお前は持っている。必ずや力になってくれるだろう」
セシリーがケーンらを振り向いた。
「どうか私に…私に、力を貸して下さい」
むろん、というように一行は頷く。
かくしてレスタニアから来た覚者は、フィンダムの覚者と共にフィンダムの未来を担うこととなった。
芯なる樹は、原始の雫によって治療されるのを待っている──。
~シーズン2.3へつづく~
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